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幼い頃に父に連れられて、この国が建ち上がった場所と言われている島に渡ったことがある。国の外に出たことのないヒルメが、たった一度だけ旅に出た思い出だった。
夕方までその島で祭祀を行い対岸まで船で戻ったのだが、海の水面がどんどん不透明になっていって、夜の帷が海の上にも広げられたようで怖かった。
そんなことを考えているうちに、タケハヤの腕の中にすっぽりと抱きとられていた。緊張で細かく震える身体を感じながら、ヒルメは何も言わずにうっとりと目を閉じた。
(3年の間こうなるのをずっと待っていたのだ)
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