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「そう思われるのも仕方ないでしょうね。私は国許のことが気にかかるので、宴が終わったあとに出立したいと申し出たのですが、コヤネどのにしばらくこの国に留まって欲しいと言われたのですよ」
ウズメの血の気がさっと引いた。
「もしや、サルタヒコさまを足止めしたのは…」
サルタヒコは怒りを孕んだ瞳で、ウズメを見返した。いつも冷静沈着な彼が感情を露わにするのは珍しかった。
「あなたの想像どおり、私が勢の国の跡取りに選ばれたかどうかを確認していたのだと思います。私には異腹の兄がおります。その兄が跡取りに決まったので、このまま私をヤマトに留め置いても良いと判断したのでしょう」
サルタヒコは大きなため息をついた。
「私は勢の国に戻っても王位には就けない。であればヤマトに残ってヒルメさまの伴侶になるのはどうか?といずれ打診してくることでしょう」
ウズメの組んだ両手がガタガタと震え始めた。
「サルタヒコさまが、ヒルメさまと…?」
サルタヒコは眉をひそめたまま、ウズメを見て、その手が震えているのを見て慌てたように手を取った。
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