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「もちろん断るつもりです。そうしたらまたしばらく木の国に行くことになる。あそこなら仲間もいるし、身を隠せるでしょう。ほとぼりが冷めるまであそこにいるつもりです」
サルタヒコははしばみ色の不思議な瞳でウズメをじっと見つめた。
「ウズメどのとまた離れるのは寂しいが、背に腹は変えられぬ」
「は、はい…」
ウズメはあまりのことに言葉が出なかった。
ヒルメが伴侶を得ればタケハヤが必要以上にヒルメに近づくこともなくなるし、その伴侶がサルタヒコであれば尚更睨みも効くという判断なのだろう。
(だがそれは誰の望みにも沿っていないのに…)
タケハヤと共にヤマトにやってきたサルタヒコが、王太子に選ばれなかったと聞いてホッとしたばかりだった。
自分も傍系とはいえヤマト王族の血を継ぐ者ではあるが、異国の王に嫁ぐ資格があるかといえば確かにそうとはいえない。もっと身分のある力のある国の王族や、勢の国内の功績のある臣下の姫などが選ばれることも多い。
だが王位に縁のない王子であれば、異国で縁付いても良いのではないか、と2人で話し合っていたのだった。
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