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母の手の温もりを逃さないように、ヒルメは握りしめたままでいた。涙を流すこともできず、絶望感に押しつぶされそうになりながらじっとしていた。
その時荒々しい足音と子どもの叫び声が聞こえた。足音が近づいてきて、戸が勢いよく引き開けられた。振り返ると恐ろしい形相の父が立っていた。
父は右手に大きな袋を提げているように見えた。ヒルメは声も出せずにその光景を見ていたが、やがて大きな袋に見えたものが、人間であると気付いた。しかも自分と同じ年頃の少年のようだった。
父はこの世のものとは思われぬ表情で、少年を床に放り投げた。放り出された少年はひどく打擲されたようで、顔が赤く腫れて、ところどころに血が付いていた。服も破れて、剥き出しになった皮膚に血が滲む生々しい傷口が見えた。痛みに呻きながら、それでも必死に身体を起こそうとする。
ヒルメはその顔を見て驚いた。
(タケハヤ…なぜそなたが)
少年の背中に、父の足が降ってきた。あまりの痛みに少年が悲鳴をあげる。父は少年の背中を踏み抜かんばかりに力を込めながら、腰に佩いた剣を抜いた。
「イザナミよ!戻ってこい!」
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