10章 破戒

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          (2) その日タケハヤはサルタヒコやフトダマに伴われ、朝から狩りに出ていた。 早朝の祈祷から戻ると既にタケハヤは出かけたあとで、ヒルメは仕方なく1人で仕事用の部屋へ行った。 身体の鍛錬を行っていないヒルメは彼らの狩りについて行くことができない。馬に1人で乗ることも出来ないのだ。移動は徒歩で行く以外は、いつも輿が用意されていた。今までは特に不便もなかったが、タケハヤと共に行動できる機会が減るのは切なかった。それに加えて、女王になってから長時間の神事も増えて、体力を付ける必要性を感じてもいたのだった。 特に近頃は長い時間立っていることでめまいを起こすことがあり、ウズメや周りの者たちを心配させていた。元々頑固で口数も多くないヒルメは、少しの体調の悪さを訴えることはなかった。それが余計に周囲の気を揉ませることになっていたのだが、ヒルメは気づいていなかった。 ヒルメは馬に乗ることもできないし、弓を引くことも剣を振るうこともできない。あまり体力がないということは自分でもわかっていた。 ウズメは幼い頃から巫女舞の名手で、神々を楽しませるために舞うことがあった。彼女の踊る姿は他の舞手とは違い、情念を感じさせた。
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