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「ウズメ?」
ハッとして顔を上げたウズメは、瞬時に恥じ入ったように頭を下げた。
「ヒルメさま、失礼いたしました」
「なんのこともない。ちょうど良い、私の部屋に来ぬか?」
ウズメは黙ってヒルメに従った。
2人で差し向かいの位置に座り、侍女の入れてくれた体を浄化する薬草茶をすする。
「ヒルメさまは…」
「サルタヒコどのとはどうするつもりなのだ?」
2人で同時に沈黙に耐えかねて、口を開く。ウズメはあっ、と声をあげて、平伏した。
「ご無礼を…」
「よい、元より我々はそんな仲ではないだろう」
ヒルメは少し笑った。
「そなたが木の国に行ってしまったら寂しいと思っただけだ」
「ヒルメさま…」
サルタヒコが木の国へ立つということが、もうヒルメの耳に入っているということは、宮びとたちのほとんどが知っているということなのだろう。ウズメはほんの少し語気を強めた。
「私はどこにも参りません」
ヒルメは目をぱちぱちさせた。少し驚いたようだ。
「木の国でサルタヒコどのと結婚するのではないのか?」
「……」
ウズメは黙ったまま下を向いていた。
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