10章 破戒

11/18

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/164ページ
「ウズメ?」 ハッとして顔を上げたウズメは、瞬時に恥じ入ったように頭を下げた。 「ヒルメさま、失礼いたしました」 「なんのこともない。ちょうど良い、私の部屋に来ぬか?」 ウズメは黙ってヒルメに従った。 2人で差し向かいの位置に座り、侍女の入れてくれた体を浄化する薬草茶をすする。 「ヒルメさまは…」 「サルタヒコどのとはどうするつもりなのだ?」 2人で同時に沈黙に耐えかねて、口を開く。ウズメはあっ、と声をあげて、平伏した。 「ご無礼を…」 「よい、元より我々はそんな仲ではないだろう」 ヒルメは少し笑った。 「そなたが木の国に行ってしまったら寂しいと思っただけだ」 「ヒルメさま…」 サルタヒコが木の国へ立つということが、もうヒルメの耳に入っているということは、宮びとたちのほとんどが知っているということなのだろう。ウズメはほんの少し語気を強めた。 「私はどこにも参りません」 ヒルメは目をぱちぱちさせた。少し驚いたようだ。 「木の国でサルタヒコどのと結婚するのではないのか?」 「……」 ウズメは黙ったまま下を向いていた。
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加