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「もしやフトダマが反対しておるのか?私が説得してもよいぞ」
「いいえ、そうではないのです」
ウズメの瞳が揺らめいていた。
「サルタヒコさまの異腹のお兄さまが、勢の国の跡取りに決まったのがほんの少し前だったのですが、そのお兄さまが亡くなられたのです」
「なんと。病でか」
ウズメは頷いた。
「サルタヒコさまのお父さまも病の床に伏せっておいでで、もはや時間の余裕はないようです」
ヒルメは微笑んで、
「ウズメ、そなたが妃になって勢の国に行くのなら、私は喜んで送り出すぞ。何を悩んでおるのだ」
その力強い言葉に、ウズメの大きな目から涙が溢れた。
「サルタヒコさまは勢の国のお世継ぎになる方です。そのうちどこかの王家の女性を娶ることになるでしょう。さもなければ自分の国の、身分のある女性と結婚するべきです」
ヒルメは言葉を失った。
なんの障害もない2人だと思っていたのに、ほんの月が一巡りする間に事は真逆の方向に向かっていた。
「勢の国は我がヤマト王国に従うという意思を見せている。そなたが嫁ぐのに障害はないと思うが…」
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