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困惑しながらヒルメは続けた。ウズメはゆっくりと首を振った。
「だからこそなのです。むしろ勢の国の臣たちは、ヒルメさまとサルタヒコさまのご結婚を望んでおられると聞きます。そうなれば、ふたつの国の結びつきはそれでさらに強くなると…」
ヒルメは目を見開いた。
「それはありえぬことだ!」
ヒルメはウズメの震える手を握りしめた。
「私は誰にも嫁すことはない。それはそなたも知っている通りだ」
ウズメは頷いた。
「私は、ヒルメさまにも幸せになっていただきたいのです。誰よりも、です」
泣きながら主人のことを思いやる優しいその気持ちをありがたいと思いながら、ヒルメは言葉を探していた。自分の気持ちは決まっていたが、誰にも告げてはいなかった。だが、ここでなら言える、いや、今言わなければならないと思った。
「ウズメ、私はタケハヤと共に国を治めていこうと思っている」
ヒルメは自分の声が緊張で震えているのを感じていた。
「これは誰にも明かすつもりはなかったが、お前には言っておきたいと思った。私の心にはタケハヤがいる。他の者が入る余地がないほどに」
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