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咄嗟にヒルメの身体が動いていた。
父の剣と少年の間に割って入る。自分が傷つくことも、命を失うことも考えなかった。頭は空っぽで、自分でも驚くような勢いで身体が動いていた。
剣を振りかぶった勢いで父が少し伸び上がったところに思い切り横から体当たりを食らわす。父がバランスを崩す間に、少年を突き飛ばして父の足元から助け出すと自分の背後に庇った。
「ヒルメ!どけ!」
父は鬼の形相になっていた。
ヒルメは何が起きているのかわからないまま、なんとかこの場を収めなければとだけ考えていた。
「その者の命とイザナミの命を取り替えるのだ」
父は剣を抜いたまま近付いて来る。
「父上、母上はお亡くなりになりました!」
ヒルメは叫んだ。
「父上がこの子を連れに行っている間に、亡くなられました!」
ヒルメは父を睨むようにしながら、叫び続けた。誰かが駆け付けてくれるのを祈りながら。
「そこをどけ…命を取り替えるのだ、私のイザナミとその憎い男の命を、取り替えれば…」
父の目は狂気に染まっていた。
「イザナミは永遠に生きる…私とともに」
「父上…」
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