10章 破戒

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          (4) この頃ヒルメは体調を崩すことが多くなった。朝夕で気温の差が大きい時期なので、微熱が出たり引いたりを繰り返していた。 元々小柄で華奢な女王の身体を心配し、ウズメは常に付き従っていた。 その日も朝の祈りを終えたヒルメは顔色が悪かった。まだ日が高く昇る前に政の指示を出し終えて、ヒルメはツクヨミを呼ぶように言いつけた。 ツクヨミは急いできてくれた。ウズメのようにぴったりと寄り添うことは出来なくとも、いつでも姉の元に飛んでこられるように心の準備はしていたようだ。 いずれ姉を支える副王になるために、ツクヨミは準備をしていた。かつて父王を支えていた宮びとたちと言葉を交わし、心を通じておく。それが姉を支えることになると必死だった。 年が若く、失うものがないツクヨミは、一途だった。ひたすらにヒルメを支えるという目的のために、年嵩の宮びとたちに学びを乞い続けた。その努力する姿は宮びとたちの心を打った。 特に目をかけてくれたのが父王の懐刀であったコヤネだった。人脈を作るということに無頓着なヒルメと違って、ツクヨミが多くの人の信頼を得たのは、コヤネの助言が大きかった。
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