10章 破戒

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「まあ、政のことで臣たちにも知られたくないことはありますよね」 ツクヨミがにやっとしながら言うのに、ヒルメは背筋が凍るような気持ちがした。 日々の気持ちを書いたものを、ヒルメは小さな箱に入れて置いてあった。そこにはどのようにこの国を良くしていきたいか、仕事の始末の付け方をどうするか、ということに混じって、タケハヤへの溢れる思いも綴られていた。 (ツクヨミにだけは見られてはならない) ツクヨミの自分への思慕の情は、時に度を越していた。そんなツクヨミがタケハヤとヒルメの関係性を知ったらどうなるのか、考えるのも恐ろしかった。 細々と政の指示をしながら、ツクヨミの飲み込みの速さに舌を巻く。今さっき指示したことの数段先を読んで始末を始めている。 (ツクヨミにこの国のことを任せておけば、間違いはなさそうだわ) 微笑みながらツクヨミの作業を見守るヒルメの脳裏に、ふと (国のことをツクヨミに任せて、私はタケハヤと違う場所で暮らすのはどうかしら…?) 密かに契りを結んでから、月が3回ほど巡っていた。日に日にタケハヤの面影はヒルメの心身を侵食していった。
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