11章 発覚

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           (3) ウズメの母は名をヒリトメという。 フトダマとは幼い頃からの知り合いで、親同士が結婚を決めた。フトダマが誠実だったので、特に大変な思いをしたこともなかった。 唯一驚かされたのは、夫が急に離れを造り、そこに女性を迎えた時だった。 側女をこっそり娶ったにしては、様子がおかしい。慣れない様子で世話を焼いている姿が、緊張感に溢れている。 しばらくはその客に会わせてもらえずにいたが、ある日改まってフトダマが頭を下げてきた。 「どうか離れにいる方の面倒を見てやって欲しい」 首を傾げながら離れに行くと、自分よりいくぶん年嵩だが、気品のある美しい女性が、大きく膨れたお腹を庇うようにして横たわっていた。 (イザナミさま…!?) 会ったことはなかったが、夫から聞く様子と、目の前の痩せた女性の姿が一致した。 「世話をかけてすまないが、よろしく頼む」 イザナミは力ない声で言った。 ヒリトメは大きくなったお腹と王妃の青白い顔をかわるがわるに見て、 (大きな赤子に違いない。お身体が耐えられるのだろうか) と内心思った。
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