11章 発覚

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ヒリトメはあまりものを深く考えない素朴な性質で、目の前の困難に全力で立ち向かう気丈さがあった。 最初の子どもを幼い頃に失っている共通の経験があったこともあり、王妃に寄り添い、出産を成功させることが自分の役目と心が決まるまでにそう時間はかからなかった。 お産は思ったより重くはなく、数時間で赤子は生まれてきた。新しい布に包まれた赤ん坊を抱いたイザナミはぽろぽろと涙を流した。いろいろ考えることがあるのだろうと、ヒリトメは王妃を1人にした。 翌日、イザナミの姿はもう離れになかった。 夫に聞くと、宮に戻ったという。 「まだ床を払う時期ではないのに…」 と、ヒリトメは夫に異議を唱えたが、イザナミの意思だったという。フトダマは 「何も聞かないでこの子の面倒を見てほしい」 と頭を下げた。 夫の必死な様子から断れないのは察したが、王の子を一臣下の家で育てることの理由はわからなかった。もしかして夫が王妃と通じたのでは?と疑問がわかないでもなかったが、夫の様子から疑いはすぐに晴れた。 そのうち、可愛らしい男の子の世話を焼くことに純朴なヒリトメは夢中になった。
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