11章 発覚

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男の子は成長が速い子で、歩くのも話し出すのも早かった。活発で、身体も丈夫だった。 健康で普段は手がかからないが、何かの拍子に火がついたように泣き始め、一晩中泣き喚いていることもあった。 言葉がはっきり話せるようになってからは 「お母さんはどこにいるの?」 と言って泣き叫ぶことがよくあった。 ずっと面倒を見ているのだから、ヒリトメのことを母親と思い込みそうなものだが、なぜだか自分の母親は別にいるとはっきりわかっているようだった。 この利発そうな子どもはタケハヤと名付けられて、すくすくと育っていった。同じ年頃の子に比べて背が高くて逞しく、性格もフトダマやヒリトメに甘えたりはしないように自分を律しているようなところがあった。 タケハヤはその身体に熱量が収まりきらず、大人しくしているのは苦手なようだった。フトダマの家に仕える若者たちが一緒に木に登ったり、川で泳いだりして遊んでやっていた。ヒリトメの体力ではタケハヤと遊んでやることもままならなかった。 身の回りの細々としたことは、気が良く回るウズメが教えてやっていた。ウズメは小柄だが敏捷で、身体が効いたので、よくタケハヤと男の兄弟のように遊んでいた。
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