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(4)
ヒリトメは娘が連れてきた少女を見たとき、10数年前の出来事を鮮明に思い出した。
即座に膝を折って拝伏するヒリトメを、ヒルメは感情のない目で見ていた。
輿に乗ってウズメの実家を訪れる間に、ヒルメ自身がことの顛末を理解したのだった。母に言いにくそうにしているウズメを制して、ヒルメが自ら言った。
「そなたは母上のお産の世話をしたそうだな?」
「はい。イザナミさまのお世話を致しました」
「そなたは見ただけで、目の前の女性が妊婦であるかわかるのか?」
「……」
ヒリトメはなんと答えればいいかわからない様子で、平伏したままだった。
「ヒリトメ、顔を上げるがいい。私はそなたの力を借りるためにやってきたのだ」
ヒリトメが顔を上げると、すぐ近くに所在なさげに佇む小柄な少女がいた。
「ヒルメさま…私でお手伝いできることなら、なんなりと」
ヒルメは力無く微笑んだ。
「私が話すことは、そなたとウズメだけの秘密にしておいてほしい。ヒリトメ、そなたは見るだけで妊婦かどうかわかるのか?」
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