1章 母恋い

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「タケハヤ、そなたの父上も母上もそなたを嫌っておるのではないのだ。きっと事情がおありなのだろう。時がくればきっと会える。だから笑って待つのだ」 「は…はい!ありがとうございます」 タケハヤは一瞬顔をクシャクシャにしたが、必死で涙を堪えていた。その様がいじらしく、可愛かった。 一本盛りのたんぽぽを手折り、手渡す。 「そなたの部屋に飾ればいい。母上を思い出すよすがになろう」 そう言って立ち去るヒルメの後ろ姿を、タケハヤはずっと見送っていた。
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