嘘に憑かれた話

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 お客様の語りをメモに書きとめてから顔を上げると、もうそこにお客様はいらっしゃいませんでした。お客様に出した珈琲は、まだわずかに温もりが残っていました。  マスターに聞いても、店を出て行った気配はありません。 「あの人は多分、自分の存在自体を嘘にしちゃったんだろうね」  マスターはそう言って、お皿を拭いているのでした。
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