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それが分かってから、琴音ちゃんはみんなを助けようと必死でした。怪我をする人全部が分かる訳でもないようで、琴音ちゃんが言うには、“怪我をしてるのが見える” 時は伝えているそうです。
自分が“見えていなかった怪我” をしてる人がいると、琴音ちゃんはとても悲しみました。
人からもらった怪我がどれほど痛いのか、私には分かりません。それでも誰かが怪我をするよりは、琴音ちゃんの心は痛まないのかもしれません。
だから、琴音ちゃんは嘘つきになってしまうのです。
しかしそんな事が一変する事が起きたのです。
***
放課後、私と琴音ちゃんで遊んでいた時です。急に琴音ちゃんがハッとした顔で、団地の入り口付近に立っていた田中のおじいちゃんに駆け寄りました。
きっとまた、田中のおじいちゃんが怪我をするのが見えたのでしょう。琴音ちゃんは両手で田中のおじいちゃんの右肘を掴もうとしました。
しかし次の瞬間、バチッと肌を叩く音が響き、琴音ちゃんは地面に倒れていました。
田中のおじいちゃんが、琴音ちゃんが触れる前に、琴音ちゃんの頬をはたいたのです。
「またおかしな事を言うつもりだろう! 俺に近寄るな! タチの悪い餓鬼め!」
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