ワンダーランド

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 夜も深まり少しずつ街の喧騒が静けさを帯びてゆく。  まるで憑き物が落ちたかの様に清々しい顔をした男はそそくさと帰り支度を進めていた。 「あっ、そうだ。 せっかく綺麗な下着してるんだからこれじゃ勿体ないよ。」 「えっ?」  男の上半身の脂肪を集められるだけ集めてやるとしっかりとした胸ができあがった。 「ほら、この方が綺麗でしょ?」 「でも、これじゃ胸が出てて…恥ずかしいよ。」 「何言ってるの? 恥ずかしいから興奮するんじゃない。」  その言葉を聞いた瞬間、男の瞳に鈍い光が宿るのを私は見逃さなかった。 「それじゃ次はまた来月だね。 連絡するよ。」 「うん、待ってる。バイバイ。」 バタン……。 「……ぷっ!くくっ…!!あっは!!はははは!!」 「何が仕事の効率が上がるだ! カッコつけてんじゃねーぞ!豚野郎がっ!!」 「Tバックだとあからさまで下品?? 女の下着付けて興奮してる変態がどのツラ下げて言ってんだ!!」  この世界は狂ってる。 だから自分も同じように狂わなければ生きていけない。  でも誰もこの世界の狂いに気付いていないから、自分の狂いにも目を背けて隠して生きる。  キレイなスーツを着こなすサラリーマンも、カフェで談笑するオシャレな女子も、塾に通う優等生も、スーパーで夕飯の買い物をする主婦も。  みんな、みんな、みーんな、変態ばかり。  狂った世界で必死に自分だけはマトモだって言い聞かせてるあなたのトクベツ、私に見せてよ。  私はいつでも「ワンダーランド」で待ってるよ。
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