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階段をのぼりきるとガラス扉の向こうに、女性がひとり座っていた。見たところデスクはひとつしかない。恐る恐る扉を開くと、メガネをかけた神経質そうな女性職員が、なんの前触れもなくすくっと立ちあがり、綺麗に斜め45度のお辞儀をしてきた。
「いらっしゃいませ。どうぞ、こちらへ」
「は、はぁ……」
どうぞと勧められるがまま『殺人課』と書かれたプレートのさがる受付窓口の前へと進む。
「申請書はお持ちですか?」
「いや、それはまだ……」
「では、こちらが殺人申請書となります」
すっと滑るように差し出されたソレは、確かに公的な申請書だった。震える手でソレを受け取り、力が抜けたようにすとんと椅子に座る。
……夢みたいだ。本当にあったんだ。これでアイツを殺すことができる。
「そちらの用紙に必要事項を記入していただいて、審査が通りましたら殺人許可証が発行され――」
「え、あ、待ってください。あの……俺、詳しいことはよくわかってなくて……」
女性のメガネがキラリと光る。
「失礼しました。わたくし、殺人課担当の浦見晴子と申します。こちらが名刺となります」
「はぁ……」
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