三日後に散るのを待っている

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 あの人は容赦なく僕からポケットティッシュを奪い、洟をかんだ。涙でマスカラが溶けているのもお構いなしに目元をごしごし擦るので、目の周りも黒くなった。それでもなおあの人の源泉は枯れることなく、涙をあふれさせる。  いたたまれなさに、本気で退散を考えかけていたときだ。ぐうぅぅぅぅ。腹の虫が鳴いた音がした。むろん僕ではない。まじまじと見つめたあの人の顔が、泣き笑いになる。 「やだ、恥ずかしい。泣くのって体力がいるんだね」  全力で泣いていたと思ったら、次の瞬間には全力で笑っている。ほんとうに子どもみたいなひとだ。僕はおみやげにもらったビニール袋の中身を取り出した。全国的にも名の知られたスナック菓子。麦わら帽子をかぶったおじさんのキャラクターが袋にプリントされている。 「食べます?」  二人して桜の木の陰に入り、袋を開封した。ひとつ口に入れて、頬張る。スナック菓子は口当たりが軽く、まるで食べた気がしない。僕が一個味わうあいだに、あの人は二個も三個も口に放り込むので袋の中身はすさまじい勢いで減っていく。 「わたし、あんまりこういうの食べないのよね」 「嫌い?」 「嫌いとか好きとかわかるほど食べてない」 「じゃあ、何が好き?」 「ビールと焼き鳥」 「うわっ呑兵衛だ、この人」
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