うそつき

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胸に感じるそのぬめるような感触に、僕はその子の肩に手をかけて引き剥がそうとした。けれど次の瞬間ガリッと先端を噛まれ、一気に身体を駆け巡るゾワゾワした感覚に体が震えた。 そんな僕の様子を逃さないその子は、さらにそこを甘噛みしながらもう片方を強く抓った。 『ひっ・・・っ』 体が大きく跳ねる。 『先生・・・胸で感じるんだ。男・・・知ってるの?』 舌で先端を転がされながらのその言葉に、吐息と振動がダイレクトに胸を刺激する。 『あ・・・ぁ・・・』 片手で胸を弄り、もう一方の手は器用にベルトを外して僕の下着の中に入ってきた。 『あぁっ・・・っ』 あの子が僕を握っている。 それだけで僕は白濁を放っていた。 『先生、握っただけでイッちゃったの?でもまだ萎えてないね。見て、まだビクビク震えて勃ち上がったままだよ』 胸から耳へと移動したその子の舌は耳をグチョグチョ舐め、直接耳に囁く。 『エロい体。誰に仕込まれたの?こっちも開発済み?』 その子の指が後ろに這う。僕の放ったぬめりを纏ったその指は、容易にそこへ入り込んだ。 『・・・恋人いるの?昨日も抱かれた?ここに挿れたの?』 あまりにもすんなり受け入れたそこに2本3本と指を増やし、それでもなお柔軟に広がり抵抗を見せないそこへあからさまに不快感を表した。 3本の指で中を擦られ捏ねくり回されている僕は、その快感にその子の言葉に答える余裕はなかった。 『あぅ・・・ん・・・ぁ・・・』 男を受け入れることに慣れたそこは、指の次に挿れられる太い物を欲してひくつき、蠢いた。 それを指で感じたその子は乱暴に指を引き抜くと、一気に自らの昂りを捩じ込んだ。 『ひっ・・・ああぁ・・・っ』 最初から勢いよく打ち付けられ、僕はがくがくと体を揺さぶられる。快感を与えると言うよりは自分の欲望のまま激しく腰を揺らすその子は僕の腰を掴み、一気に高みを目指す。そして・・・。 『うぅぅ・・・っ』 僕の中のさらに奥へ昂りを捻じ込み、その子は中へ放った。僕のそこも激しい抽挿の間に2度目の精を放っていた。 荒い息を吐きながら、その子が僕の胸に倒れ込んでくる。いつもならそのまま余韻を楽しみたいところだけど、この子とはダメだ。 僕は優しく肩を押し、身をずらして中からその子を引き抜いた。その拍子に中からとろりと白濁が流れ出てきても、僕は冷静にティッシュで押え、衣服を整えた。 『今日のことは事故に遭ったと思って忘れる。だから君も忘れなさい』 呆然としたその子の衣服も整えてやりながらそういうと、その子は僕の手首を掴んだ。 『嫌です。これからも先生と・・・』 『兄弟ですることじゃない』 その言葉に手首を掴む手に力が篭もる。 『まだそんなうそを・・・!いくらオレを遠ざけるためだからって・・・』 『うそじゃない。帰って母親に聞いてみるといい。1年の時に面談で話したから』 そう、かつての母と最初の2者面談の時に話をした。そしてその時、この子が思い出さなかったら、そのままにして欲しいと頼まれていた。けれど、僕は話してしまった。僕たちが兄弟であるということを。これ以上この子の思いが暴走してしまわないように。その想いが、昔の記憶を起因とした勘違いであると分からせるために。 『うそだ・・・』 体を小刻みに震わし、口の中で何度も呟くその子に、もう一度言った。 『僕たちは本当に兄弟なんだよ』 その言葉にその子はキッと睨んだ。 『うそつき』 睨みながら、その子の目には涙が溜まっていく。 それが流れ落ちないように、必死に堪えて、さらに言った。 『うそつき!』 さらに鋭い声を上げたその子の肩をそっと押して、僕はその子を準備室から出した。 『とにかく、今日はもう帰りなさい。お互い夢を見たんだ。そういうことにしよう』 まだ怒りに満ちた顔をしているその子の目の前で、僕はドアを閉めてカギをかけた。 まだ引き下がらないと言ってドアを叩くかと思ったが、そのまま何も起こらなかった。 僕は誰もいない静かな準備室で、自分の体をそっと抱いた。 この体を、あの子が抱いた。 あの子の手が這い、握り、そして熱い昂りが穿たれた。 まだ残る、あの子の感触。 それだけで胸が高鳴り、体が熱くなる。 僕はしばらく震える体を抱き締めて、あの子の余韻に浸っていた。
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