「ないものねだり」

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朝起きると、昨日よりも視界が狭く感じられた。 周りが暗くなっている。 狼狽した。 これは気のせいなんかじゃない。 そして、この視界は昨日見た夢と同じようだと思いながらも、どうしてこうなったのか分からない。 けれど、一つ考えられるのは·····。 「ん·····っ」 隣で寝ていた妹が目を擦りながら起き上がった。 そのせいで解けかかっていた目を覆っていた包帯が取れたのだろう、はらりと、ベッドに落ちる。 「あ、とれちゃった」 妹は寝ぼけ眼で包帯を手に取って巻き直そうとする。 その時、ぼくは目を見開くこととなった。 妹の、。 しかもその瞳の色は珍しいと言われた、見る角度によって朝焼けや夕暮れのような色合いを見せる、ぼくの瞳の色。 それが何故、妹に。 「ル、ルイカ·····? 目が見えるようになったの·····? というよりも、あった、というか·····」 自分でもよく分からない疑問をしどろもどろに言っていると、ルイカは、ぱぁっと花が開くように笑った。 「おにいちゃんが、わたしにプレゼントしたんでしょう! じぶんの目で見られるのってこんなにもうれしいのね! ありがとう!」 「あ、いや·····」 ぼくは一度も妹にそんなことは思ってもいなかった。 ああ、だからなのか。 妹の願いを叶えてやらなかったから、その罰として、ぼくの目玉を·····。 それでもそんなことありえるのか。 そんな非現実なことが。 分からない。 今もなお、刹那に近い速度でぼくの視界を蝕み、暗闇へと誘われる。 ぼくが見た最後の光は、妹の罪悪感の無い笑顔。
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