暗闇の中で

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暗闇の中で

父親が寝たのを確かめると、美月は家をこっそりと抜け出し、「暗闇の国」を目指して駆け出しました。 「暗闇の国」は、一度遠くから見ただけなので、どのくらい離れているのかわかる術がありません。美月は長旅を覚悟し、出発しました。 「暗闇の国」は、やっぱり、山頂から見えたより、「光の国」から遠く離れていました。美月がたどり着くのに、丸3日間かかりました。 「暗闇の国」に着いてみると、美月は早速唖然としました。「暗闇の国」は、想像していたほど暗くなく、光はちゃんとあったのです。 当然、「光の国」の眩しさとは、雲泥の差でしたが、暗い空には大きな天体が浮かび、ギラギラと照りつけるのではなく、キラキラと瞬く程度の柔らかな光を放っていました。そして、大きな天体の周りには、もっと細やかな光を放つ、小さな光の点が沢山散らばっていました。その光をまっすぐに見ても目は痛くなりませんし、直下に立っても熱くありませんでした。美月には、この柔らかな光を放つ物体が不思議で、神秘的で、たまらなかったです。 美月は、柔らかな光を頬に感じ、顔を微かに照らされながら、しばらく空を見上げ、見惚れていました。 気がついたら、暗闇に抱かれて、眠ってしまっていました。
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