新発見

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「暗闇の国」がこんなに明るいなんて、「光の国」の人たちが「暗闇の国」について言うことは、きっと全部嘘に違いないと確信しました。 美月は、しばらく「暗闇の国」で過ごしてみることにました。 父親が言う通り、「暗闇の国」には、人間以外の生き物が沢山住んでいました。しかし、「お化け」や「怪物」と呼ばれるような恐ろしいものではなく、人間と平和に共存していることがわかりました。 そして、「暗闇の国」の人は、「光の国」の人とは違い、プライドがあまり高くなく、排他的ではないことがわかりました。他所から来た人でも、受け入れ、優しく接してくれました。「暗闇の国」のおおらかなところに惹かれ、移住する人もいるようでした。他にも、「光の国」からやって来たという人には、何人か会いました。 「暗闇の国」の国民は、派手な人はいなく、地味でした。話す声も小さく、控えめな性格の人が多かったです。美月にとって、「暗闇の国」の人の人格の方が馴染みやすく、心地よかったです。 ある晩、美月が一人で空を見上げていると、男の人に声をかけられました。 「ここの人ではないよね?」 「はい、「光の国」から来ました。なんでわかったんですか?」 美月が自分の正体がバレていることが不思議で、尋ねました。 「空を珍しそうに眺めているから…毎日同じなのに…。」 男の人がくすくす笑いながら言いました。 「そんなこと、ないですよ!私は、この国に来てまだ一週間ぐらいですが、毎日確実にちょっとずつ変わっています。」 美月が自分の「暗闇の国」の一週間分の空観察の感想を胸を張って述べました。 「…そうですか。生まれてからずっと見ている者は、意外と見えていないのかもしれないですね。」 男の人が謙虚な物腰になり、言いました。 「ところで、お名前は?」 「美月と言います。そちらは?」 美月が単純に答えました。 「美月⁉︎「光の国」から来たのに、美月と言うの⁉︎」 男の人が目を丸くして、美月を見ました。 美月は、男の人が驚く理由が分からなくて、聞き返しました。 「それの何が不思議ですか?」 「だって、「月」というのは、それなんですよ!」 男の人が、美月が「暗闇の国」に来てから癒されている空に浮かぶ大きな天体を指差しました。 「そちらの国には、ないでしょう?それなのに、「美月」という名前をつけるなんて…美月さんの親は、きっと、こちらの国にゆかりのある者ですね。」 美月は、自分の名前の由来を生まれて初めて知り、びっくり仰天しました。自分の名前の由来が「暗闇の国」にあるとは、まさに驚きでした。
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