人生アナウンス

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人生アナウンス

「次は~カゲロウ~、カゲロウ~」  四号車の扉だけが開いた。  丹生 替(たんじょう かわる)は六号車から降りカゲロウへと変わった。  幼虫から成虫になり、一日で虫生を終え丹生は再び列車に乗っていた。 「短い!短すぎる!」  丹生はあまりの短さに叫ばずにはいられなかった。 「次は~ドローンアント~、ドローンアント~」  三号車の扉だけが開く。  丹生はアリならば少しは楽しめるだろうと、浮足で降りた。  生まれ、成長しさぁアリとして外を見てみるぞ、そう意気込んでいたが止められる。  他のアリたちに引きずられ女王の元へ。  丹生はしたくもない相手とし交尾をし、アリ生を終えた。 「あのかわいい子が良かった……」  嘆く丹生は次に期待する。 「次は~ハツカネズミ~、ハツカネズミ~」  ハツカネズミは寿命が二十日だからではなく、妊娠期間が二十日間程度だからハツカネズミというらしい。  丹生は生前、人間だった時、ネズミに興味を持ち調べていた。その時にハツカネズミのことも調べていたのだ。  四か月と言わず、長く生きてやる。そう意気込み二号車を降りる。  家屋の柱をかじることなどせず、ひっそりと生きた。  最初はかじってやろうとも考えていたが、得を積もうと考えた。  ひそやかに生きたおかげか五か月ほどは生きた。  最後は美味しそうな餌に釣られ罠にかかってしまった。 「次は~カイウサギ~、カイウサギ~」  丹生が気が付いた時、そこはペットショップだった。  人が見ている。目が合った。  目が合った人物の家にペットとして連れていかれる。 「次は~……」  人生アナウンスは今日も誰かを案内していた。
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