時間

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長いようで短かった高校生活。 それも今日で終わり。 思えばこの三年間、色々なことを経験してきた。   中学生の頃から続けてきた陸上競技。 昔から足だけは速い方だと思っていたけど、現実は速い人がたくさんいた。 中学総体では県大会決勝にも残ることができなかったから、高校では県大会決勝進出、優勝を目標に日々努力した。 結果は県大会決勝八位。 目標の決勝進出は叶ったけど、優勝することはできず東北大会にも進むことはできなかった。 悔しい気持ちはもちろんあるけど最後の大会で自己ベストを更新、最高の走りをすることができたから満足している。   部活動引退後のことは…正直あまり思い出したくない。勉強、勉強の日々だった。 勉強があまり得意じゃなかった僕は、授業の他に、放課後に行われた講習、長期休みは夏期講習、冬期講習と勉強に追われた。 だけど、講習後に友達と話しながら帰ることはとても楽しかった。講習がない日は友達と遅くまで教室に残ってたわいのない話をした。 部活ばかりの生活を送っていたからとても新鮮で勉強の息抜きにもなった。 そのおかげもあってか、第一志望の大学に合格することができた。 …ギリギリだけど。     色々あったけど充実した楽しい三年間…   友達とバカみたいなことをたくさんして過ごした三年間… 「もっと高校生活楽しみたかったよな」 「何で最後の一年に限って」       …になるはずだった。    昨年冬に流行した新型コロナウイルス。 その勢いは留まることをしらず、瞬く間に全世界に広まった。 それは日本も例外でない。 学校は突如休校。いつ学校が始まるかも分からない不安の中で日々を過ごした。 そして、春に全国高等学校総合体育大会、通称高総体の中止が正式に決定した。 最後の大会に向け全力で取り組んでいた僕にとってそれは最悪のニュースだった。 その後、少し経ってから、県独自の特別大会を実施することが決定された。だけど一度落ちたモチベーションを再びあげることは難しかった。 また、練習も今まで通り行うことができず、特別大会の結果は散々なものだった。   勉強にもあまり真剣に取り組むことができず苦労したが、何とか志望大学に合格することはできた。   本来ならば友達と卒業旅行に行って遊ぶはずだったけれどそれも叶うかどうか。   「このご時世だからしょうがないよ」   「みんな我慢してるんだから」   このような言葉をたくさん聞いてきた。 僕だけじゃない。みんな我慢している。 そんなことは分かってる。 分かってる。 だけど、、それがどうした。 理屈で片付く話じゃないんだよ。   高校生活は三年間しか味わうことができない。   たった三年間。   時間が止まることはない。 過去に戻ることはない。 誰に対しても平等に進んでいく。   平等に。   まったくもって不平等だ。 世界が突如変化した。 僕は、一体今どこにいるんだ。 明るかった未来から光が消えた。 真っ暗闇だ 何も見えない 誰か助けて   過ぎ去っていく時間のなかで僕だけが迷子になった。
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