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廻り合った2人に楔が打たれた
俄に頬が熱くなっていくのを感じる。
悔しさと羞恥心でな。
我慢仕切れんくなった俺は、ガシガシと髪を掻きむしり、あ~と声を上げた。
「俺のパートナーになってや!」
思い切って、男の唇を塞いだった。
唇柔らかいんや、なんて査閲しながら閉眼した。
もう永久に此の儘でええなぁ、と思ってたんに、ムニッと頬を挟まれ、ゆっくりと離されてもうた。
「ほんまに俺でええんか?」
男の声は震えとる。
でも、俺は其の手に優しく重ねてこう言うた。
「アンタがええんや」
最初に似たようなやり取りをしたけど、こない心が温かくなるなんて思いもせんかったわ。
そ
の後、お互い名前を教え合った。
名前も知らずに話をしとったなんて、俺ららしいちゃらしいな。
今、男を抱いて暗闇を飛行しとる。
「晴明、大丈夫か?」
心配して言うたんに、男……小坂晴明はニヤリと笑いよる。
「今んとこな……落とさんといてや?」
素直やない晴明は憎まれ口を叩く。
「当たり前や。しっかり捕まっとれよ」
俺は抱きしめる力を強めた。
「茶色の髪って吸血鬼っぽくないなぁ」
余裕こいて俺の赤朽葉の髪を弄る晴明。
「元人間やからな」
「えっ!?」
心の臓が出そうなくらい仰天した声を上げるから、クククッと笑ってやる。
「……法螺に決まっとるがな」
「び、びっくりしたやないか!?」
面白い奴やわ。
「ああ、心満意足やな」
晴明はギュッと背中の腕の力を強めた。
俺らの楔は固く打たれた。
盈月の物怪が弄月の男に廻り合ったのは、運命やったわ。
絶対離れんし、離さんからな。
〈完〉
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