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契りを交わす
「吸い尽くすんは今度にするわ……はよ着んと、風邪引くで」
俺が襟締と上着を取って渡すと、鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をしとったわ。
「それより、いつまでもここにおってええんか?」
「……大丈夫や、あとは帰るだけやし」
男は悲しそうな表情をしながら襟締を締め、上着を着る。
「おたくどないするん?」
冷静な男は湯呑を振り、顔を上に向けながら口元へと運んでいった。
俺はこの男から離れたない、いや離れられんくなっとった。
「俺と契りを交わしてや?」
飲み干したんか、フルフルと紙の湯呑を振っとる男を真剣な眼差しを向けて言う。
「……なんの?」
意味が解らんか様に惚けて言う男に、俺は決意が歪まん様に微動だにせん。
此奴は怖いまま。
でも、興味があんねん。
血だけやなくて……男の全てを手に入れたくなったんや。
其れなのに
「今日のことは誰にも言わんから安心しぃや。こう見えても、口固いんやで?」
諦めた様に、虚ろな上に潤ませた瞳で笑いよった。
「ちゃう……ちゃうねん」
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