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鋼メンタル
「おかしいなぁ……パパ小さい頃は『昆虫博士』って呼ばれてたんだけどなぁ……」
テントに戻り、空の昆虫ケースを見ながら、パパが寂しそうに呟いた。
……が、しかし。次の瞬間パパは思い付いたように顔を上げた。
「そうだ! パパ、実は小さい頃『熱帯魚くん』とも呼ばれてたんだった!」
この人の立ち直りの早さには心から敬服する。
そもそも小さい頃『ホタル狩り名人』と呼ばれてたと言って夜の沢に降りて行き、蛍光黄色の上下スエットを着た小さいおっさんに散々追い回されたのは、まだ先週の話だと言うのに。
「よし、来週は海でスキューバダイビングしよう! 熱帯魚と触れあえるぞ!」
パパの晴れやかな顔を見て僕は小さくため息をついた。
海か。暗い海底でスキンヘッドの海坊主みたいな小さなおっさんに絡まれる未来しか想像できないが仕方ない。
トラブルメーカーの癖にトラブル回避能力0のパパを1人で放り出すわけにはいかない。
「僕もいくよ」
そう言うとパパは子供のように笑った。
「今度こそ大丈夫だ。なんてったってパパは昔『熱帯魚くん』と呼ばれてたんだから!」
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