酒好きカブトムシ

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酒好きカブトムシ

「そもそもおじさん誰?」 僕の声におっさんは少したじろいだ。 「俺か? 俺はホレ……カブトムシやんけ」 おっさんはふてぶてしく、茶色い上下のスエットを引っ張って主張する。 「カブトムシって角が在るはずでしょ?」 「ボウズ、エエか?野生の世界は厳しいんや。日々これ闘いよ。男と男のしのぎを削るバトルでな、こう……ポッキリいってまってん」  おっさんは相撲をとるようなポーズでそう説明した。 「角が折れたってことは負けたんだね」 「いや、ホレ、そんときはたまたま、な。 あるやろ、色々。ちょっと体調悪かってん」 「負けて酒呑んで酔っぱらってるってカッコ悪いね」 「な、なんやねん! これはお前らがこんなとこにこんなもん置いてくからやろ!」 「はい、僕たちが置いていったものだって認めたね」 「フグッ! ボウズ、策士やな……」
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