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人(?)の恋路を邪魔するやつは……
見上げた木の枝には、上下茶色のスエットを着こんだしゃくれ顎のおっさんが仁王立ちしていた。
「こちとら今年の婚活に命かけとんじゃ!
折角ええ雰囲気になっとったのに、何してくれとんじゃ、このクソが!」
「え、ええっ!? また?」
半泣きのパパに代わって僕はおっさんに聞いてみた。
「婚活相手ってこのクワガタの事?」
パパの手に捕まれて足をバタバタと動かしている雌クワガタを見たおっさんは血相を変えて怒り出した。
「なんじゃワレェ!
人の女を横取りしようっちゅう腹か!?
そこ動くなよ! 白黒つけたろやないかボケェ!」
クワガタを名乗りながらまた人の女とか言ってるし……とは思ったが、そんな突っ込みを入れられる雰囲気ではない。
「逃げようパパ!」
僕はクワガタをパパの手から逃がすと、おっさんの罵詈雑言を背中に受けながらパパの手を引いて走った。
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