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自信がないようで、最後の方は目を点にして終わった。
惜しい、というか鍋だコッヘルは。そう思うと自然に出た笑いを抑えて「ドッペルゲンガー」と正してやった。
するとハッと眉をあげ照れ笑いを見せてきた。
「そうでしたね。そんなに似ているなら一度は見てみたいですよ、気になっちゃいます」
「似ている人って、世界に三人いるとか言うよな。俺に似ている奴がいるなら、たしかに俺も見てみたいかもしれない」
「でしょー? 実際目の前にいたら、不思議な感覚になりそうです。
あーっ、そう言えば聞いてください。中庭の軒先のとこ、なんと燕の巣ができそうんなんです。まだちっちゃいんですけどね。
ふうむ……燕って遠くに旅立つのに、どうやって去年と同じ場所に帰ってくるんでしょうね?」
そう言って僅かに首を傾げると、ピアノ線のような細い黒髪は緩やかに肩を撫で、差し込む陽がそこに艶を与える。そんな姿を見て、何からか分からないため息が出た。
「……なんでだろうな」
「本能的、なものなんでしょうか……それとも記憶があるんでしょうか?」
不意に揺らいだカーテンから覗く外の緑に視線が動く。
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