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我慢の限界だったのか、瑛人がベッドから下りて類に歩み寄った。股間にぶら下がったモノがプラプラとリズミカルに揺れる。
嫌なものを見てしまったと思った。
「類!今日俺は君を抱きに来たんだよ。それがこんな場末の坊さんを相手にしないといけないなんて・・・ひどい仕打ちだ」
瑛人が絶望しきった表情で頭を抱える。いかに今日を楽しみにしていたか、全裸で熱弁を振るっていた。
「おい聞き捨てならねえぞ。誰が場末の坊さんだ」
うんざりとした顔で瑛人がこちらを向く。
「っはあぁ・・・。だいたいなんだ、そのチャラついた形は。フサフサ髪を生やしやがって。いっそ剃毛プレイでもしてやろうか」
いちいち癇に障る野郎である。達央は横になって頬杖をつくと、
「さっすが弁護士。言葉責めが得意かよ。・・・語彙のストックも豊富そうだもんなあ?六法全書くらい?」
「うるっせええ!!黙らねえとケツに数珠ぶち込むぞ!!」
「やってみろオラァ!!!!」
早歩きでベッドに戻ってくる瑛人。互いの髪を掴み殴り合いのバトルに発展しそうなところで、類が盛大にストップをかけた。
「あーもう、どうしたら仲良くしてくれるの?!」
類が困り果てたように天を仰ぐ。
コイツが類をシェアする相手だと知った時から仲良くするなんて選択肢はないわけだが、どうやら類は本気で悩んでいるらしい。余計なことは言わずに黙っておいた。
・・・くそ。大体どっちが上手いかなんて、どうすりゃわかるんだよ。同じポジション同士の対決ならまだしも、勝ち方がわかんねえ。
イライラしながら寝転がる。
「せめて少しでもその気になるように、ゲイビでも流しておこうか。ついでに照明も調節して」
類がテレビのリモコンを手に取り、ランキング上位のコンテンツを流し始める。
・・・これ前に俺がお気に入りって言ったやつだ。類、覚えててくれたのか。
心の中で微笑む。なんだかんだ言って、類は俺を優先してくれているわけだな。
「ああ類・・・嬉しいよ。俺がちゃんと勃つように、俺の好きなやつを流してくれるなんて」
・・・なんだって。
瑛人が勝ち誇ったように達央を見た。プツンと頭の血管が切れる。
「ちっげえ!!!これは俺が好きって言ってたやつなんだ。お前の好みに合わせたんじゃない」
「んだと?!!人の趣味真似すんな!!!」
「お前の趣味なんか知るかボケ!!!」
「じゃっ、照明変えまーす」
途端に部屋がヌーディなピンク色に染まる。
・・・なんということだ。
色っぽい室内。鼓膜を刺激する男優の喘ぎ声。しかも明日は休みで、いつまでだって愛し合える状態。
お膳立ては完璧なのに、唯一ぶら下がったモノだけは、こじんまりと構えているだけでなかなかやる気になってくれない。
・・・頼むよ。お前に火がついてくれないと、俺はこのまま帰れねえ。さっさと終わらせるためにも、そんな呑気でいるな
ゲイビデオを凝視しながらそんなことを考えていると、瑛人がこっそりと耳打ちをしてきた。
「おい、ちょっといいか。話がある」
「は?なんだよ。話すよりやるべき事が今の俺らにはあるだろうが」
「いいから聞け・・・!ちょっと考えてみたんだが、この状況って、実は良い機会だと思わないか?」
瑛人の言葉に、怖気が走った。
「急に何・・・お前。俺の体に興味でも湧いたの?」
「沸いてんのはてめえの頭だ・・・!!!」
瑛人が小声で怒鳴る。
「いいか。お互い状況は一緒だったと思うが、俺たちは毎週一回、別の曜日に類と会ってセックスしてきた。類の仕事は土日休みで、平日は深夜残業のハードワーク。推測だが、俺ら以外にセフレは今いねえと思う」
話が見えず、達央は困惑する。
「だったら何だよ?」
本当に察しが悪いな、そう言って瑛人は続けた。
「いいか。こんなど田舎だから仕方ねえと思うが、今類は貴重な休みをそれぞれ俺とお前に捧げてんだよ。つまりだな」
言葉を区切り、瑛人は凶悪な笑みを顔に貼り付けた。
「どっちかが類のもとを去れば、残った方が類と週に二回会う事が出来るってわけだ」
「お前・・・天才かよ・・・!!!」
初めてこの男を見直した。もはや感動すら覚える。
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