夢中になると

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 【ガタンゴトンガタンゴトン】  「次は江古田〜江古田です。お出口は〜」  俺は必要もないのに毎日同じ電車に乗り、何の楽しみもない人生を歩み続けている。  生まれてこの方何かに夢中になった事なんて一度もない。  (あっ……一つだけあったわ)  それは電車に乗ってくる若い女性のパンツを眺める事だ。  (さてと……今日は誰のを眺めようかな)    「ねぇマサキ君はPTS(ピーティーエス)の中で誰が好き??」  制服を着た女の子が隣の男の子に喋りかけている。  彼氏なのかはたまた同級生なのか……  まぁどっちでもいい。今日はこの女の子のパンツを眺めよう。  「PTSってアイドルの?? 正直興味ない。ってか顔が皆似てない??」  「はっ?? それ本気で言ってんの?? ポンタンだよ?? PTSだよ?? アメリカのビルボードで一位取ったんだよ??」  「いや、一位取ったからって何って感じ。顔が似てるのに変わりないじゃん」  「はっ?? 皆違う顔だし!! 世界中で人気なのに興味ないって言う人おかしいよ」  「世界中で人気って言う割には曲知らないんだよな」  「知らないのマサキ君だけだよ。私の友達皆PTS好きだもん」  「それは友達がPTS好きなんじゃなくて、PTS好きな人と友達になっただけだろ??」    「何なのさっきから?? マサキ君PTSがカッコいいから嫉妬してんの??」  「はっ?? お前こそなんだよ。大体PTSの人気って作られたもんだろ」  「何が??」  「動画の再生回数が何億回突破したから国民的人気とか言ってるけど、再生回数と曲の知名度が比例してなさすぎだろ」  「何?? 一部の人が何回も再生してるって言いたいの?? もしかしてマサキ君ってネトウヨ??」  「出たよ何かあったらすぐネトウヨって言うやつ。まさかお前がそんな人種とはな」  「何人種って?? 好きな人の悪口言われたら誰でも怒るでしょ」  「だいたいPTSってこの国の事馬鹿にしたTシャツ着てたじゃん。そう言う所が嫌いなんだよね」  「はっ?? あれはスタッフが着せただけで、PTS悪くないし!! 大体最初興味ないって言ってたくせに嫌いとか言ってんじゃん。興味あるから好きとか嫌いになるんでしょ!! 興味ないとか嘘じゃん」  「出たよスタッフが着せただけとか言うやつ。大人なんだから着たらダメとか自分で判断出来るだろ!! マジでPTSのファンって頭おかしいやつしかいねえし変な擁護ばっかするよな」  「はぁ?? そっちこそ頭おかしいんじゃないの?? マサキ君ってホントキモい!! クラスの皆に言っとこー」  「クラスの皆に言って恥かくのはお前だバーカ!! PTSの信者ってキモいんだよ」  (やれやれ醜い争いだ)  何かに夢中になるとこうも周りが見えなくなるとは。俺からしたらどっちもキモいんだけどな。  「次はひばりヶ丘〜ひばりヶ丘です。お出口は〜」    おっと目的地の石神井公園はとっくに過ぎていた様だ。周りが見えなくなったのはお互い様だったな。  さて……ここで降りるか。  「って言うかねぇ、マサキ君。何で電車にさ」    (じゃあな!! 少年少女達!!)  【パサッパサッパサッ】  「鳩が乗っていたんだろうね」  《完》
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