【女性の懐古】古賀 玲子(こが れいこ)

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彼はそんな私の可愛くない態度に怒らないどころか気にした様子もなく、むしろ楽しそうに子供らしい強引さで、私を遊びへと連れ出して行った。 遊んでいると、段々と楽しくなってきて、いつの間にか私は笑っていた。彼も私につられてなのか楽しそうに笑っていた。 それから毎日のように彼は私を誘っていろんな遊びを一緒にしてくれた。悲しさは気づかない内に消えていて、毎日のように彼に連れられて遊ぶ中で、他の子供たちのことなんてどうでもよくなっていた。 人気者の彼はよく子供たちの遊びに誘われていたけど、たまに強引に連れ出されてしまうことはあっても、ほとんどは断って私と遊ぶことを優先してくれた。 そうして約三年の時を、私は彼と共に過ごすこととなる。彼が私のことをどう思っていたのかは分からないけれど、私は共に過ごす中で気づかない内に彼に好意を寄せていた。いやもしかしたら、一人きりの寂しい世界から外に連れ出してくれた、あの日には既に好きになっていたのかもしれない。 だけど断られた時、今の関係が壊れるかもしれないことに恐怖した私は、勇気が出ずに告白できないまま彼との友人関係を続けていた。 しかし私が気持ちを隠してまで守っていた大切な関係は、唐突に終わりを告げる。 戦争が終わって少し経ったある日、父の新しい仕事先がようやく決まり、仕事場のある町に近々移住するという話を両親から聞かされた。他のことよりも何より彼と別れたくなかった私は、当然のように引っ越したくないと駄々を捏ねた。 私が引っ越したくないと泣き喚くと、両親が悲しそうな顔をしながら申し訳なさそうに私を宥めてきて。そんな両親の姿を見て、私も申し訳なくなって仕方ないことなんだと諦めた。 次の日、彼にだけは移住のことを話しておきたくて、私は重い足取りでいつも彼と遊ぶ時に待ち合わせ場所にしていた井戸の前に向かい、両親から聞いた話をそのまま彼に伝えた。話を聞いた彼は驚き、やがて悲しそうに沈んだ顔になった。 初めてだった、彼の悲しそうな顔を見たのは。いつも微笑んでくれる彼の見せた表情に、私はやはり彼と別れることが受け入れられずに抱きついて泣いてしまった。
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