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1.
体育の授業が終わり、クラスメートと後片付けに取り掛かっていたときのこと。
軽い物にはみんな群がるのに、重い道具など誰も運ぼうとしない。
私はぽつんと残っていたカラーコーンが可哀想になって、仕方なく拾いに行った。
コーンを持ち上げるとずっしりと重く、手から滑り落ちそうになる。
これを倉庫まで……絶望的な気持ちで体の向きを変えると、突然手の中が軽くなった。
逆光で顔が見えずとも、これほど大きな人影は一人しかいない。
筋肉隆々のラグビー部員・石田頼くんはわたしが持っていたコーンをむんずと掴むと、軽々と左肩に担いだ。
呆然としていたわたしは、何を言うべきかをようやく思い出した。
「あっ、ありがとう!」
石田くんは何も言わなかった。
振り返ることなく、どんどん歩いていってしまった。
更衣室から教室に戻ると、わたしはバッグからミルクティーのペットボトルとチョコビスケットを取り出した。
束の間の休み時間を満喫していると、すぐに石田くんも大きな体を揺らして戻ってきた。
わたしは石坂、彼は石田。出席番号が一つ違いで後ろの席だったから、思い切って声を掛けた。
「あの、さっきはありがとう。もしよかったら、これ」
チョコビスケットの個包装を2個差し出すと、巣穴で眠るハムスターのような細目が、カッと開いた。
「……いいの?」
聞きながらすでに袋を開けている。これが記念すべき初めての会話。わたしが頷いた瞬間にはもう、夢中になって食べていた。
おやつを食らうハムスターの食欲に呆れながら、体重100キロと噂される石田くんを観察した。
肩幅が広くて怖かったけれど、よく見ると顔は優しい。
こんがりと日焼けした肌に、きりっとした眉。とろんとした一重瞼の奥で、瞳がキラキラ輝いていた。
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