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3.
翌日の昼休み、わたしは悶々とスマホをいじっていた。
何をしていても「夏っぽいスカート」を考えてしまう。
動きやすいパンツスタイルが多いわたしは、そんなの持っていない。
クローゼットの奥にしまっているスカートは黒やベージュ色で、夏色とは程遠い。土曜日までにどこかで買わなきゃ――。先生に見つからないよう、バッグの中でこそこそとブランドのセール情報を検索していた。
「ね、石坂さんってわかってないよね」
ふいに聞こえてきた、背後の声。
ぞくりと心臓が震えた。これは、真実さんの声だ。わたしはとっさに聞こえないふりをした。
「誠と付き合ってるからって、周りが見えてないよ。うちの部員に近付かないでほしい」
「しかも石田くんって好きな人いるんでしょ? 絡まれて絶対迷惑だよね」
会話の相手も同調している。心臓が重くなって苦しくなる。わたしは震える足で教室を飛び出した。
廊下で石田くんとすれ違ったけれど、無視して空き教室に駆け込んだ。
いい子ぶってる? 迷惑?
石田くんに、好きな人がいる?
涙なんか出ない。
あんな言葉のために、めそめそ泣いてやるものか。
だって、わたしには誠くんがいるんだから。
石田くんが誰を想おうと関係ない。
だけど、午後は授業の内容が全然頭に入らなかった。
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