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4.
土曜日になった。
わたしは誠くんのリクエスト通り、夏らしいパステルグリーンのフレアスカートに白いブラウスを合わせた。
新調したアイロンでミディアムヘアを緩く巻き、淡いローズ色のチークとリップグロスで顔色良く仕上げた。
バスの時間を間違えて、映画館に早く着きすぎた。
初夏を告げる日差しが眩しい。映画館の最寄りのバス停を降りて、正面に広がるスポーツ公園の木陰に飛び込んだ。木々のざわめきに誘われるように、公園の中を散歩する。
5分ほど歩くと、遠くからアナウンスが聞こえてきた。
「現在のプレーは、前原南高校、背番号……、……田選手のトライです」
思わずぴたりと足を止める。
一部聞こえなかったけれど、コールされたのは間違いなくうちの学校名――。
わたしは球技場に向かって走り出した。
フレアスカートが広がるのも、髪が乱れるのも、もう、どうでもよかった。
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