あの日のことを

俺

「坊」それは、我が家での俺の渾名。
最近は、この渾名で呼ばれる機会も減った。

俺の兄は優秀だ。ほぼ全てのことを卒なくこなす。そして、どこか俺を下に見てる。
ときどき俺を貶す。

気に食わない。

気に食わない。

気に食わないけれど、兄は素直になれないタチの人だと知っている。良くありがちな、好きな子に悪戯してしまうタイプの人なのだ。
なんたる迷惑な人だ。
気がつくまでその言葉の棘にどれだけ傷ついたことか。
とにかく、兄は俺のことを結構大事に思ってくれていることを知っている。怒るから、絶対に言わないけど。

喧嘩をしても、嫌いだと言っても、結局家族だ。だから、手放せない。見捨てることもできない。