第3話 猫と人形

3/4
前へ
/81ページ
次へ
 玄関に、鍵はかかっていなかった。  俺はそのまま扉を引くと、おそるおそる中を覗き込んだ。  入ったとたん異臭がしたとかいってたけど、不思議と変な臭いはせず、中に入れば、玄関ホールって言うのかな?  そこには、ホテルのパーティー会場みたいな大きな広間があった。  高い天井と、赤い絨毯。  見上げた先には、蜘蛛の巣がかかったシャンデリアがあって、その奥には、二階に続く階段。  それも、俺の家みたいな狭い階段じゃなくて、横に三人くらい並べるような広い階段。  まさに、ドラマとかで、すごい人たちが、すごいパーティーをする時でてくるような豪華すぎる玄関だった。 (スゲー……マジで、執事とか出てきそう)  昔は、お嬢様が執事とメイドと一緒に暮らしていたとかいっていたけど、ホントっぽい。  もちろん、窓はところどころ割れていて、床にはガラスの破片(はへん)とか落ち葉とかも散乱しているし、古いのは確か。  でも、窓から射し込む夕日のおかげか、その屋敷は何年も空き家になっているわりには、とても、明るくて綺麗だった。 「ミ~、どこだー?」  その雰囲気に軽く恐怖心がやわらいで、俺は玄関から、ミーに声をかけた。  辺りを見回しながら階段の下まで進むと、リンと鈴の音をならしながら、階段の上から、ミーが顔を出した。 「ミー!」  よかった、無事だ──ミーの無事を確認して、パッと顔が明るくなる。  その後、ミーが階段からおりてきたのを見て、俺もミーの元にかけよった。  だけど 「ん? お前、なに(くわ)えてるんだ?」
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加