第1話 四丁目のお化け屋敷

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   ──お化け屋敷。  その言葉を聞いて、場の空気が一気にざわめいた。生徒たちの中には、青くなったり、びくついたり。  そのお化け屋敷の話は、俺達が暮らす、この桜川(さくらがわ)という町では、とても有名な話だった。    ──四丁目の洋館には、幽霊が出る。    いつからか、そう言われるようになった、そのバカでかい屋敷は、もう何年と空き家になっている家だ。  昔はどっかのお嬢様が、執事とメイドと一緒に暮らしていたらしいけど、その頃の面影なんて一切なくて、今は荒れほうだいの廃墟(はいきょ)。    少し前までは、格安で売りに出されていたこともあったらしいけど、住む人住む人、すぐに引っ越してしまうらしく、今では誰も寄りつかなくなった、いわくつきの屋敷だ。 「うえー……マジかよ。持っていかれたって、どういうこと?」 「それが、昨日サッカーやってたら、またまた屋敷の方にとんでっちまって……取りに行こうとしたんだけど、あの家に入った瞬間、スゲー異臭(いしゅう)がしたんだよ!? あれ絶対、死体とか()まってるって!!」 「ヤダー! やめてよ、変なこと言うの~」  本田君の恐怖体験をきいて、数人の女子たち悲鳴(ひめい)をあげた。  異臭がするとか、なにそれ怖すぎ! そりゃ、持っていかれたって言いたくなるよな?  結局、本田くんは、それ以上は進むことが出来なくて、サッカーボールは諦めることにしたらしい。  買ってもらったばかりのボールをなくして、親にも叱られて、散々だったといっていた。 「おーい、雑談はいいから、片付けするぞー」  すると、怖い話で盛り上がる俺達の話に割りこんで、クラブ顧問の伊勢谷(いせたに)先生が声をかけてきた。  もうすぐ、チャイムが鳴る。  俺達は、さっと気持ちを切りかえると、全員で片づけをして、クラブ活動を終えた。
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