第2話 颯斗の秘密

3/3

24人が本棚に入れています
本棚に追加
/81ページ
「よし、直った!」  服はすぐに縫い終わって、俺は針とハサミを裁縫セットにしまった。  こころなしか、ララも喜んでるように見える──ていったら、ますます笑われるかもしれないけど、こうして自分の好きなことに没頭(ぼっとう)している時間は、すごく心がみたされた。 「また、ララに新しい服、作ってあげようかなー?」  元通りになったララをみて、ふむと考える。  今ある洋服は、五着くらい。  また、新しく作ってみようかな? (次はどんなのにしよう。ちょっとレベルをあげて難しい服に……) 「お兄ちゃん!!!」 「うぇッ!?」  だけど、その時、いきなり扉が開いて、俺は慌てて、ララと裁縫セットをポケットの中に隠した。 「な、なんだよ、夕菜(ゆうな)! いきなり入ってくるなよ!」  入ってきたのは、妹の『威世(いせ) 夕菜(ゆうな)』  今、小学四年生の夕菜は、俺と同じ赤毛の髪をしたツインテールの女の子。ちょっと口うるさくて、なまいき。  だけど、その夕菜が 「え? どうした? 夕菜」 「ぅ、うぅ、お兄ちゃん……っ」  目を合わせた瞬間、泣きそうな顔をしている夕菜がいて、俺はおどろいた。 「なんで泣いて……何かあったのか!?」 「うぇぇぇん、お兄ちゃんッ……ミーが、ミーがいなくなっちゃったぁ!」 「え?」  その瞬間、俺は目を見開いた。  ミーは、8歳の三毛猫で、俺たちが子供の頃から、ずっと一緒にいる猫なんだけど…… 「い、いなくなったって、なんで!?」 「リビングの窓をあけたら、いきなり外にとび出していちゃって……うぅ……どうしよう、お兄ちゃんッ」 「……ッ」  ひくひくと泣く夕菜を見て、俺は、じわりと汗をかいた。  実は、俺たちの家には、昔もう一匹猫がいた。三毛猫のミーと一緒に産まれた、虎猫のロー。  だけど、そのローは、家から脱走した時に、車に引かれて死んでしまった。  だから、夕菜はその時のことを思い出して、不安で仕方ないのかもしれない。 「うぅ……お兄ちゃん、どうしよう」 「っ……大丈夫だって! 俺が、必ず見つけて帰ってくるから!」  夕菜の肩を掴んで、心配するなと呼びかけた。  だけど、室内飼いのミーは、ローと同じように、外に出たことは、ほとんどなくて  ──こうしちゃいられない。  俺は、すぐさま部屋から出ると、ミーを探すため、家から飛び出した。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加