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「よし、直った!」
服はすぐに縫い終わって、俺は針とハサミを裁縫セットにしまった。
こころなしか、ララも喜んでるように見える──ていったら、ますます笑われるかもしれないけど、こうして自分の好きなことに没頭している時間は、すごく心がみたされた。
「また、ララに新しい服、作ってあげようかなー?」
元通りになったララをみて、ふむと考える。
今ある洋服は、五着くらい。
また、新しく作ってみようかな?
(次はどんなのにしよう。ちょっとレベルをあげて難しい服に……)
「お兄ちゃん!!!」
「うぇッ!?」
だけど、その時、いきなり扉が開いて、俺は慌てて、ララと裁縫セットをポケットの中に隠した。
「な、なんだよ、夕菜! いきなり入ってくるなよ!」
入ってきたのは、妹の『威世 夕菜』
今、小学四年生の夕菜は、俺と同じ赤毛の髪をしたツインテールの女の子。ちょっと口うるさくて、なまいき。
だけど、その夕菜が
「え? どうした? 夕菜」
「ぅ、うぅ、お兄ちゃん……っ」
目を合わせた瞬間、泣きそうな顔をしている夕菜がいて、俺はおどろいた。
「なんで泣いて……何かあったのか!?」
「うぇぇぇん、お兄ちゃんッ……ミーが、ミーがいなくなっちゃったぁ!」
「え?」
その瞬間、俺は目を見開いた。
ミーは、8歳の三毛猫で、俺たちが子供の頃から、ずっと一緒にいる猫なんだけど……
「い、いなくなったって、なんで!?」
「リビングの窓をあけたら、いきなり外にとび出していちゃって……うぅ……どうしよう、お兄ちゃんッ」
「……ッ」
ひくひくと泣く夕菜を見て、俺は、じわりと汗をかいた。
実は、俺たちの家には、昔もう一匹猫がいた。三毛猫のミーと一緒に産まれた、虎猫のロー。
だけど、そのローは、家から脱走した時に、車に引かれて死んでしまった。
だから、夕菜はその時のことを思い出して、不安で仕方ないのかもしれない。
「うぅ……お兄ちゃん、どうしよう」
「っ……大丈夫だって! 俺が、必ず見つけて帰ってくるから!」
夕菜の肩を掴んで、心配するなと呼びかけた。
だけど、室内飼いのミーは、ローと同じように、外に出たことは、ほとんどなくて
──こうしちゃいられない。
俺は、すぐさま部屋から出ると、ミーを探すため、家から飛び出した。
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