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◇◆◇
「「行ってらっしゃいませ、アラン様!」」
屋敷の中で、シャルロッテとカールが、僕に頭を下げた。
人間の姿をした二人は、つい先日、目覚めさせたばかりの僕の大切な人形達。
あれから僕は、研究に研究を重ねて、たった5ヶ月で、命の連携をとく魔法を完成させた。
今、シャルロッテとカールのハーツは──青い。
そして、僕の寿命も、もう減ることはない。
ムリだと思ってたけど、ムリじゃなかった。諦めずに頑張ったら、僕の世界は、今、こんなにも輝いてる。
「ですが、また魔王様に狙われることになるとは思いませんでしたね?」
すると、シャルロッテがそう言って、僕は苦笑いをうかべた。
そうそう、変わったんだけど、ある意味、元に戻ったとも言える。
実は僕、また、お父様と喧嘩して、家出してきちゃたんだ!
あれから魔界に戻って、お父様と話しをして、その後は、それなりに上手くやってたんだけど、お父様、僕がもう少し大きくなったら、一緒に【三大世界】を征服するつもりでいるんだって。
あ、三大世界って言うのは、僕が暮らしていた【魔界】と、天使たちが暮らす【天界】と、ハヤトたちが暮らす【人間界】のこと。
つまり、お父様は、世界征服を目論んでるみたいで、我ながら、魔王らしい魔王で笑っちゃうよね?
でも、そんなことしたら、天使たちも黙ってないだろうし、ハヤトたちがいる人間界が大変なことになっちゃう!
だから、この人間界は、僕が守ることにしたんだ。
そんなわけで、しばらく人間界に暮らすことになったから、思い切って、この屋敷を買い取って、リフォームもしてもらったんだけど
「お化け屋敷に引っ越してきた、銀髪の転校生って、悪目立ちしすぎるかな?」
「ふふ、確かに妖しさは満点ですね!」
「アラン様、くれぐれも、魔界の王子だということはバレないようにしてくださいね」
僕がそういえば、シャルロッテとカールがくすくすと笑いだした。
また、追われることになっちゃったけど、今のこの生活が、すごく楽しい。
「じゃぁ、行ってきます!」
シャルロッテに手を振って、カールと一緒に屋敷を出た。一人でも大丈夫なんだけど、カールは保護者として。
魔界の王子とはいえ、今の僕は、小学6年生だしね!
学校についたら、先生にご挨拶をして、カールと別れて、教室に行った。
僕のクラスは6年1組。
ハヤトとアヤメは何組だろう?
そんなことを思いながら、教室の前に立つ。
「はーい、みんな、席に着いてー」
先生が入って、僕もその後に続く。
教室の中は急にざわつきだして、少し緊張したけど、入った瞬間、懐かしい顔を見つけて、胸が熱くなった。
いた、ハヤトとアヤメだ。
いきなり現れた僕を見て、すごく驚いてる。
まぁ、簡単には解けないって言ってたのに、たったの5ヶ月で帰ってきちゃったしね。
まぁ、それだけ僕が、優秀だったってことなんだけど……また家出してきたなんていったら、怒るかな?
でも、いっか。
また、こうして、大切な友達に会えたんだから──
「初めまして! 転校生のアラン・ヴィクトールです!」
僕が笑顔で挨拶すると、同時にハヤトが立ち上がった。顔を真っ赤にして
「ア、アラン! お前……っ」
「ただいま、ハヤト!」
きっとここから、また僕達の新しい日常が始まっていく。
可愛ものが好きで、裁縫が得意な僕たちの、楽しくて賑やかで、ちょっとハラハラしちゃうような日常が──
あ、そうだった。
最後に一つだけ、みんなに約束してほしいんだけど。
今、目の前にいる転校生が、実は、魔王の息子で、魔界の王子様だってことは
──僕たちだけの『秘密』にしてね♡
『魔界の王子様は、可愛い物がお好き』
─fin─
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