桜井和貴

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(以下は『The other of her youth』収録エピです。)  和貴が中学の卒業を控えたある日に、戸倉朱里という女の子が和貴の家を訪ねてくる。彼女は、和貴が女狂いだということを知ったうえで、アプローチをかけてきた。本気に好きになってからセックスしたほうが気持ちがいい、だからお試しでつき合って見よう、プラトニックで、という彼女の強引な主張にひとまず従い、数か月間かけて愛を育むが。約束の期日を迎え、いざ抱こうとすると抵抗を見せる朱里に、裏切られたという想いを抱き、桜井は、別れを告げる。以降、朱里と二度と再会することはなかった。  それから約一年後。畑中市に、陸上の大会で出かけた和貴は、朱里の妹である万由から真実を打ち明けられる。かつて和貴が中学時代に陸上の大会で優勝したときに、孫の姿を見たいがために会場に来ていた朱里の祖母が倒れそうになるのにいち早く気づき、優勝のインタビューを放り出して介抱したこと。朱里も祖母もそのことに感謝しており、祖母が、オーストラリアへの留学を決めた朱里に、思い残すことのないように、と遺言を残したことを。
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