娘からの依頼

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「ダメかな?」 「さすがに娘から金はもらえない、というか、それ以前の問題だよな。彼氏って、あれか? おままごととか、そういうあれだろ?」  俺の娘はまだ小学生だぞ。彼氏なんて早すぎる。どうかままごとのたぐいであってくれ、と願いを込めたが、俺の願望は数秒後にあっさりと打ち砕かれる。 「違うよ。もうお父さんってば、わたしもう小学五年生だよ? おままごとなんて、とっくに卒業したよ。子ども扱いしないで」  むっとしたように頬を膨らますみこは俺にとってはいつまでも可愛い可愛い子どもなのに、俺の娘に彼氏……だと? 「いやいやいや。小学生で彼氏なんて早すぎないか?」 「え〜、お父さん古いよ。今時小学生で彼氏いるなんて普通だよ。ゆめちゃんもりいなちゃんも彼氏いるんだから」  マジか。保育園の頃から知ってるゆめちゃんまで彼氏いるの? 彼氏を作るのは、せめて高校生、早くても中学生ぐらいからだと思うんだが、俺が古いの? 今時の小学生ってそうなの? 「まいちゃんはね、片思いしてる男の子のことをお母さんに相談するんだって。だから、わたしも大好きなお父さんに、好きな人のことを相談したいなって思ったんだけど……。ダメ?」 「う……っ」  瞳を潤ませながらおねだりポーズをしてくるみこの勢いに押され、言葉に詰まってしまう。  本当は、俺の可愛い娘の彼氏になろうなんて百年早い!とみこの彼氏に直接言ってやりたい。しかしそんなことをしたら、確実にみこに嫌われるだろうし、母親のいないみこにとって、相談出来る大人は父親の俺ぐらいだろう。  俺としては正直彼氏の話なんて聞きたくないが、裏でコソコソ付き合われるよりはマシか?  ふう、と小さく息をつき、可愛い娘の顔をじっと見る。 「浮気なんて考え過ぎじゃないか? 彼氏に直接聞いたわけじゃないんだろ?」 「直接聞いたら、はぐらかされるに決まってるよ。わたしに隠れて他の女の子に会ってないか、つきとめたいの。わたしたち付き合って三年目だから、そろそろ倦怠期の時期だと思うし……」 「さ、三年目っ!?」  付き合って三年ということは、小学二年生の頃から!? あ、頭が痛くなってきた……。 「恥ずかしくてお父さんには言ってなかったんだけど、まーくんはわたしの初恋の人なの。まーくんもね、わたしが初恋なんだって」  恥ずかしそうに顔を赤らめながらも、まるでハートが飛び交ってるかのように幸せそうなみこの姿を見て、ますますまーくんへの苛立ちが募っていく。 「らぶらぶじゃねーか。浮気の心配なんていらないんじゃないのか?」  そもそも小学生で彼氏彼女がいることが驚きなのに、小学生が浮気なんてするか? だんだんこの茶番に付き合うのがしんどくなってきたが、可愛い娘が困っているんだ。どうにか悩みを解決してやらないと。
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