娘からの依頼

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「まーくんは浮気なんかしてないって信じるためにも、お父さんに調査してほしいの! お願い、お父さん」 「……分かったよ。まーくんの写真あるか?  来週にでも調査に行くから、それまでに写真をもらえると助かる」  小学生の浮気調査なんて断るべきだったのかもしれないが、可愛い娘にここまで頼み込まれて断れるやついるのか?  まあ適当に調べたフリでもして、浮気してなかったと言えば、みこも納得するだろう。 「写真はあるけど、調査には私も一緒に行きたいの」  しかし、俺の娘は一筋縄ではいかないらしい。彼氏の浮気調査を依頼してきたあげく、自分もついていく、と? 「まーくんは、お前の彼氏なんだろ? 顔を知られてると調べにくいだろ。お父さんが一人で行った方がいいと思うぞ?」  顔をひきつらせながらそう言うと、みこは小さく首を横に振った。 「でもね、お父さんが小学五年生の男の子を追いかけ回してるのがバレたら、不審者だと思われて通報されちゃうよ? 娘のわたしと一緒に行動した方が怪しまれないと思うの」  たしかに。これでも一応プロだから尾行には自信があるが、万が一ということもある。  素人で娘で小学生のみこが一緒だと動きにくいが、通報されるよりはマシか? 「それもそうだな。じゃあ、来週の土日のどちらかでいいか?」 「火曜日はダメかな? お父さん、お仕事ある?」 「特に急ぎの仕事はないが……。もし浮気相手と会うとしたら、休みの日なんじゃないのか?」 「ううん、火曜日がいい! まーくんは火曜日に用事があるって帰っちゃうことが多いし、火曜日に浮気してると思うの!」 「そ、そうか。じゃあ、火曜日にするか」 「来週の火曜日だからね。お仕事の予定空けておいてね? 約束だからね、お父さん」  火曜日だよ?と念を押してから、宿題やってくるねとみこは自分の部屋に行ってしまう。  彼氏が浮気してるかもしれないというわりには、やけに楽しそうだな。娘の彼氏の浮気調査をすると思うと、俺の方は気が重いんだけど。
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