娘からの依頼

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 みこと約束をしていた火曜日。  約束通り小学校の前まで迎えに行き、いったんみこのランドセルと帽子を車の中に置いてから、そのまま車中でまーくんを待つ。  しばらくすると、あれがまーくんだよとみこが小声で言ったので、そちらをこっそりと伺う。 「一人みたいだな」  あれが、まーくんか。みことおなじ小学五年生にしては背が高く、大人びた男子だ。あいつが俺の娘の彼氏だと思うと腹が立ってきたが、ぐっと堪える。 「彼女も同じ学校なのに、学校で浮気するなんて考えられないよ。浮気相手と会うとしたら、学校の外だと思う」  あの、本当に小学生?  やけに現実的なことを言うみこに驚いてしまったが、まーくんが視界から遠ざかっていくことに気がつき、目立たないように静かにアクセルを踏み込む。  ◇ 「駅前? 電車でどこかに行くつもりか?」  つかず離れずの距離でまーくんを尾行していたが、まーくんが駅前の方に向かっていることに気がついてしまった。浮気相手と会うなら、知り合いに見られないところだろうが……。小学生が電車に乗って、どこに行く気だ?  「ねえお父さん、ここからはわたしたちも歩いて行動しようよ。まーくんは駅前で誰かと待ち合わせしてるのかも。車だと、追いかけられないでしょ?」  一人で考え込んでいると、みこにそう提案され、俺もそれにのっかることにした。駅前で待ち合わせにしても、電車でどこかに行くとしても、徒歩の方が追いかけやすいだろう。  コインパーキングに車を預けている隙にまーくんを見失わないか心配したが、駅前の大きな時計の近くに立っているまーくんを見つけ、ほっとした。やっぱり誰かと待ち合わせか?  駅前に遊びにきた親子のフリをしながらまーくんを観察していると、小学生ぐらいの女の子がまーくんに近づいていく。  まさか本気で浮気を?と身構えたが、あっさりと去っていく小学生を見て、どうやらそうではないらしいことを悟る。 「さっきの子ね、同じクラスの子だよ。塾の帰りだと思う」 「塾か。まーくんも浮気じゃなくて、塾じゃないのか?」 「ううん、まーくんは塾には行ってないよ。一回教科書見たら、全部覚えちゃうんだって」  嫌味なヤツ。うん、俺まーくん嫌いだわ。  うっとりとしているみこの顔を見てると、本気でまーくんを嫌いになりそうになるんだけど、どうすればいい?
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