やくそくのたね

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 遥は彼と一緒に帰宅していた。二人が話しながら歩いていると、うしろから男の子の声がした。遥には聞き覚えのある懐かしい声だった。 「ちょっと、いい?」  二人が立ち止まり振り返ると、そこには中学生くらいの少年が立っていた。不愛想な表情をしている。声には覚えがあったはずなのに、遥は少年と初めて会った気がした。そのせいで、遥は混乱し始めた。 「…知ってる子?」  となりにいた彼は戸惑って遥を見た。 「うーん」  遥の記憶は、あやふやだった。 「…覚えてないの?」  少年は呆れたように、遥に聞いた。 「ごめん、覚えてないの!」 「この前、会ったばっかりなのに、もう忘れたの?」  正直に言って頭をさげた遥に、少年はため息をついた。 「…しかたないなぁ。もう一回教えるから、思い出してよ?」 「うん、ありがとう」 「ぼくの名前は、空片(そらかた)遠馬だよ」  お礼を言った遥が少年の名前を聞いた途端、遥の頭の中でたくさんの記憶が走馬灯のように駆け巡った。 「そうだ。…なんで忘れてたんだろう。遠馬くん」  急にたくさんの記憶を思い出して戸惑った遥だった。でも、すぐに受け入れることができた。 「思い出した?最近まで、姉弟だったのに…」  遥の様子を見た遠馬は怒っているような強い口調だったけど、嬉しそうな表情だった。 「そうだったね。ごめん、ごめん」  すねているような遠馬がおかしくて、笑いながら遥は遠馬の頭をなでた。 「別にいいよ」  照れている遠馬は、遥の手から逃れようと必死だ。 「姉弟、いたんだ」  そういう彼は、意外そうな表情だ。遥が頷くと彼は首を傾げた。 「でも、姉弟だったって?」 「実は、両親が離婚しちゃったんだ。だから、もう、わたしたちは姉弟じゃないんだ」 「そうだったんだ」  遥が微笑みながら答えると、彼は気まずそうな表情になった。 「…というか、本題はその人のこと!」  遥の手から逃れた遠馬は、真顔になって彼を指さした。急に叫んだ遠馬とその言葉に、遥はもちろん彼も驚いていた。 「えっ、どうして?」 「ぼ、ぼく?」  遥たち二人が顔を見合わせていると、遠馬は信じられない言葉を口にした。 「その人、もう生きられないよ」 「えっ!?」 「うそっ!?」  遠馬の唐突な言葉に、二人は開いた口がふさがらない。遥は、遠馬が今まで遥の友達が失恋することや両親が離婚することを言い当てて、実際、その通りになった場面をたくさん見てきた。遠馬に『未来が視える力』があることも知っていた。 「う、うそ…」 「ごめん…、本当だよ。その未来が視えてしまったから…」  その場に座り込む遥に、遠馬は俯いて言い切った。 「どういうこと?」 「遠馬は、他人の未来を視ることができるの…」  戸惑う彼に、遥は弱々しくも伝えた。 「そう、なの…?」 「うん」  信じられない会話に彼は遠馬のほうを見て立ちつくしていた。
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