やくそくのたね

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 数日後、遠馬の言った通り、彼は死んだ。その春は、いつもより桜の花吹雪がすごくきれいだった。  それから、五年が経っていた。遥は、就職して遠馬と一緒に住んでいる。 「もう、あの年から、五年も経つのか」  遥は、花吹雪に包まれながら呟いた。遥がしばらく空を見上げていると、何かが花吹雪にまざって舞い落ちてきた。 「なんだろう?」  遥は、落ちたそれを拾って手のひらにのせた。それは、小さな種だった。遥はその種を見ていて、昔のことを思い出した。  遥と遠馬と彼の三人が一緒に桜の木の下にいて、その下の土に何かを埋めていた。それが、空から舞い落ちてきた種だったのだ。 『この種、見たことないね』 『うん』  小さな遥の言葉に遠馬と彼が同意する。  結局、それは枯れてしまった。そのできごとを思い出して、遥は手のひらの種をじっと見つめた。 「…これ、『やくそくのたね』だね。約束を守れなかったから、枯れちゃったんだよね」  思いつくのは、それだけだった。なぜ、それが思いついたのかは、遥自身わからなかった。 『ずっとみんな一緒だよ』  それが、約束だった。でも、それは両親の離婚と彼の死で、破られてしまった。 「約束…。いつか、また三人で会おうね!そして、絶対、花を咲かせようね」  遥は呟きながら、その種を埋めた。 「いつか、いつか…、絶対会おうね!」  遥は、また空を見上げていた。
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